話せない犬猫の原病巣を発見するりえ先生のブログ

犬猫の行動から、日本の獣医大では未だ授業のない歯科治療のこと。皮ふだけを治すのでは治らない犬猫の皮ふを、真の原病巣を探ることで治すのが好きな獣医師がぼつぼつ書いています。

歯周病での抜歯は、抜いた後の処置がとても大切!!

重症のプードルさんの歯科治療をした処、

下顎の第1前臼歯の顎の骨が溶けてしまって、折れそうになっていました。

骨が溶ける?!ってどんな感じ?と疑問に思った方

私がどうやって、それを見つけるか?

ですが、歯科専用レントゲン撮影して診断します。

レントゲンでは、X線の通り辛い骨と歯は白く写ります。

空気や筋肉はX線が通り易いので、黒く写ります。 

これは少し歯周病で上のほうの骨が少し減ってはいますが、コーギーの比較的正常な下の第1後臼歯です。


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歯の根元の下の少し黒い部分に、下顎動脈と神経が通っているのは人も同じです。

 

そして、これが歯周病でほぼ骨折しそうな

ミニチュアプードルの

第一後臼歯の部分の歯科レントゲン写真です。

歯の周りの黒い部分は歯周病で骨が溶けた部分

歯の根の横の長い黒い部分は、下顎動脈と神経の部分です。

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プードルは本来25キロ位の大型犬です。

ミニチュアにした為、骨は小さく改良されたのてすが、歯は比較的大きなまんまなので、 歯の根元が顎の下迄生えてしまっているので、歯周病になっても前歯以外は簡単に抜けません。 

ここを治療するには、

①レントゲンで歯や骨の構造を確認し

②歯を分割抜歯

③抜いた部分の歯周病で骨が腐ってしまっている汚い組織を、血管を破らないように綺麗にする→デブライメント

④同じく、そこの歯周病菌のついた汚い骨を綺麗になめらかに削る→骨形成

⑤抜いて歯が無くてなった部分に、骨補填材を詰める

⑥露出した骨と、骨補填材が漏れないように

歯肉を、他の部分から動かし←歯肉フラップを作って縫う

 

実は抜歯より、大切で難しいのが③から⑥です。

何より難しいのが、歯肉フラップです。

これが歯周炎や歯肉炎で歯肉が無くなってしまっているので、骨をどうにかして覆わないと、骨が口の中に露出したままになってしまいます。

骨折して、皮膚を縫わないで筋肉や骨がむき出しになっているのと同じです。

口の歯肉は、皮膚と違って骨に引っ付いてしまい、自由に動かないのです。

しかも、きちきちに縫うと、口の動きは止められないので縫った場所が開いてしまいます。

この歯肉フラップをどう作るか?!

 

が私達の動物の歯科の勉強会で、いつも歯周病の想定トレーニングの例題として出される

のですが、血管や唾液の出る管を想定して

歯周病でなくなった歯肉の代わりに頬の粘膜や、上顎の口蓋粘膜まで使って骨を覆うこともあります。

 

飼い主さんは、抜歯するかしないか?

をとても気にされますが、

抜歯する目的は

不要になった歯を抜くのもありますが、

そこの骨を綺麗にして感染をとり、骨を

作らせることが大切!

 

これが、歯科のトレーニングを受けた獣医師と、外科の応用で抜歯だけされたのかな?と思われる獣医師との大きな違いだろうと思っています。

歯科レントゲンで骨の状況を確認しないで

抜くことが、どれだけ危険かを

歯石とりや、抜歯されておられる獣医師の皆さんにも、ぜひ知っておいていただきたいと思っています。