話せない犬猫の原病巣を発見するりえ先生のブログ

犬猫の行動から、日本の獣医大では未だ授業のない歯科治療のこと。皮ふだけを治すのでは治らない犬猫の皮ふを、真の原病巣を探ることで治すのが好きな獣医師がぼつぼつ書いています。

歯科に力を入れている動物病院の見分け方は?!

本日、他の市から9歳のワンちゃんと飼い主さんが来院されました。
今迄も何回か歯のことを相談してこられたそうです。
歯が抜けても、どの歯なのかかりつけの獣医さんがわからず、様子見られたらとずっと言われて来たそうです。
なぜなんでしょうか?と聞いて来られました。

このことは、転院されて来られた飼い主さんに何回も聞かれることです。

 

私の答えは、獣医師は歯科の勉強はは大学でやりません。

基本の単位として、入っていないのです。ただし、1単位だけ2校の大学で歯科の授業があると聞いたことがありますが、1単位だけです。


昨年歯科を授業に組み込むことが、検討されたけれど、教えられる人材が少な過ぎて無理だと却下されたとお知りあいの先生からお聞きしました。

医大学は6年制、医学部も6年制。

獣医学部は人以外の全ての動物が対象です。

歯学部は人の歯科や口の病気だけを勉強して6年制です。

動物の歯科を20年近く細々ながら勉強してみると、特に犬猫うさぎだけでも、それぞれ動物の種類が違うと病気も構造さえも違って、口の病気だけ歯学部がある理由の判る奥の深い難しい分野だと、しみじみ感じます。


人の内科や外科の医師と同じだと思われたら良いと思います。


私も大学を出てから基本から日本やアメリカの獣医の歯科の先生達から学びましたし、今も勉強中ですとお答えしました。

もし獣医師の先生に動物の歯科を学びたいと聞かれたら、

最低限歯科用のレントゲンと歯科用のプローブを揃えるのは最低限かと思います。あの、口の中に小さなフィルムを入れて撮影する専用のレントゲンです。
これは骨折とか全体を取るレントゲンで頭を撮影してみましたが、歯は重なるので一つ一つの歯のを評価するのはムリです。


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下は、プードルさんの歯に穴の空いてるいた患部と


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歯科用のレントゲンです。


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もう一つは歯茎にしこりが出来たと来院f:id:petnomirai:20191218151404j:image

これも歯科レントゲンを歯科の道具をしこりに挿してレントゲンを撮影しました。

すると奇形歯の為にそこから歯周病が起きた例でした。


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そうしないと、歯周病の診断も出来ないし、見えている外の歯石取りでは歯周病の治療にはならないのですが、歯肉炎は治るので
治療した気持ちに獣医師も飼い主さんもなってしまうからです。


歯科レントゲンがないということは、骨折を普通のレントゲン無しでやるのと同じです。

歯科に力を入れている動物病院は、最低限歯科レントゲンが必要で、内臓を撮影するCTでは代用できません。


皆さんのかかりつけの動物病院は歯科レントゲンは持っておられるでしょうか?

それが、一つの目安です。


あとは、歯石取りのスケーラーだけではだめで、人と同じ歯科用のデンタルユニットが必要です。

歯石を取るだけでも、ユニットでは無い器械だと馬力がなくて、時間がかなりかかります。

歯石を取ってから初めて、歯周ポケットを測定したり、歯科レントゲンが撮影出来ます。

そして抜歯するにしても、歯の根を確認するのに歯科レントゲンが必要ですし

歯を抜くにも、根が2本から3本あると

高速タービンで歯の根を分割する分割抜歯という作業が必要です。


タービンが無いと、その作業もかなりムリのある作業となります。


治療の目的は、決してグラグラした歯だけを抜くのではありません。

ですから、歯石を取って貰っても口がすぐに臭くなるというのは、

その犬猫達に歯周病に感染した骨を残してしまっているのです。


骨に感染が残ったままでは歯周病を治したとは言えません。歯を抜かなくても様々なテクニックで歯周病を治す方法もあります。


又無事歯を抜いた後も、歯周病にかかった骨を除去したり、形成したりにも歯科デンタルユニットが無いと、作業が困難です。

デンタルユニットがないと、歯科の練習も難しいのです。


ですから、動物病院で歯石を取りましようと言われたとき、その動物病院に

歯科の専用レントゲンと人のような歯科のデンタルユニットがあるか?が程度の差はあれ歯科に力を入れていると獣医師の方が判ります。


日本では、2017年度の調べで開業獣医師1万軒のうち、歯科レントゲンの保有台数は700台と言われていました。


先ずは、ホームページ等でチェックされてみることをオススメします。


無麻酔の歯石取りは、歯周病が外から見えている歯石≒歯肉縁上歯石のせいだ!と思っておられる証拠です。

歯周病は見えている歯石のせいではなく、歯茎の下の歯石≒歯肉の下の見えない歯石=歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)やプラークという細菌のせいです。

人と同じです。

ひとも、歯肉の下の見えない歯石=歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)が歯周ポケットが深くて取れない時は、

オープンフラップ法で、歯肉を切除して

歯根を綺麗にすることが大切なのです。

無麻酔の歯石取りや歯科レントゲン無しの歯石取りは、見た目を綺麗にして誤魔化して、歯周病を治す時期を遅らせていると思われたら良いかと思います。


当院には、麻酔かけてや無麻酔で歯石を取って貰って歯磨きもしていたのに、

口が臭い、痛がって歯磨きをさせなくなったという、ワンちゃん達が来られています。


歯科は特にどの動物病院にかかるか?がとても大切なのです。




判ります。