話せない犬猫の原病巣を発見するりえ先生のブログ

犬猫の行動から、日本の獣医大では未だ授業のない歯科治療のこと。皮ふだけを治すのでは治らない犬猫の皮ふを、真の原病巣を探ることで治すのが好きな獣医師がぼつぼつ書いています。

皮ふと耳治療を全面に出すことで、歯科チェックがすすんだ!



最近は、当院の得意分野を皮ふを全面に出すようにしています。

耳のビデオオトスコープ検査もですが。


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以前は、歯科を全面に得意分野として出していました。

歯科は、アメリカ等で勉強してもう20年は

やっています。

治療頭数も1万頭は越しました。

歯の治療が嫌になったのか?

イエイエ、私は歯科治療こそ1番難しくて

やりがいのある科目だと思っています。

モチロン皮ふや耳が簡単というワケではないのですが。

 

では、なぜ皮ふを全面に出すようにしたか?

 

歯肉炎の段階で、又は歯周病を早期に発見したかったのもあります。

歯周病はかなり酷くならないと、当院を検索されません。

 

そのことで、皮ふで来院された飼い主さん達には、歯のことが早期に判ってケアできて

本当に良かったと言っていただいております。

 

このワンちゃんはミニチュアダックスフントです。


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5年位前に、全ての歯を抜いたばかりか、下顎の骨の感染が酷く、顎の穴が塞がらす

結局顎の3分の1を切除することになりました。


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私が過去やった中で、一番重症のワンちゃんでした。

今月13歳で睾丸がまだあり、

睾丸摘出手術をされたので、

久々その後のお口の写真も撮影させていただきました。

 

前立腺肥大により、排便困難←人と違い

直腸も押すので

肛門周囲線維腫←男性ホルモンで肛門に腫瘍が出来ていました。

良性で早期なら、去勢で無くなります!

 

手術当時はまだ8歳

最初にこのお家のダックスのワンちゃんIちゃんと言うメスを診察させていただいたのは、多分8年位前です。

 

 このお家はダックスさんが確か当時4匹居ました

そのワンちゃんは、歯周病が酷く口が臭いからと処置をされたいと血液検査をしました。

 

血液の半分は水だといわれます。

なので残りの半分は赤血球なのです。

このワンちゃんは赤血球が正常が50%はあるところが20%ぐらいでした。ヘマトクリットと言う値です。

白血球の数も正常が5000個位の所が1万ぐらいありました。

あまりのひどさに、私は東京在住の歯科の先生にもお願いして一緒に手術をしていただこうと思っていました。

このワンちゃんには2週間効く抗生物質を投与して、2週間後に血液検査の結果をお伝えすることになっていました。

ところが1ヶ月間 来院されませんでした。

なぜならば食欲もあり歩いていたからだそうです。

 

もう一度血液検査をしました。

すると血液の量は10%ぐらいになっていました。

白血球は3万個ぐらいに増えていました。

重度の貧血と、敗血症をおこしていました。

東京の先生とも相談し、輸血しながら手術しようとしても、亡くなってしまう可能性が高く、抗菌剤を投与しても数週間以内に亡くなるだろうとお伝えし、残念ながら手術は出来ないとお伝えしました。

すると、1週間しないうちに倒れました!と

この子を抱えて、娘さんが飛び込んで来られました。

残念ながら、救命は出来ず気管チューブを入れる為に口をみると歯石の奥に鉛筆より大きな穴が奥歯の上顎にぽっかり空いていました。

歯周病で、歯肉が腐り骨が露出していたのです。

これで良く先週まで、食べていたなと可哀想になりました。

 

その飼い主さんは、そのワンちゃんが亡くなったショックで1年間動物病院に足が向けられなかったとおっしゃいました。

それから他の残りの3匹のダックス達を次から次へと治療することになりました。

皆親子関係がありました。

皆ひどかったですが、最後にやった、このワンちゃんが一番ひどく、何回やっても顎の排膿が止まらず、結局感染した下顎を切除し、

唇を部分切除して中に縫い込んで骨をカバーして、やっと膿を止めることができました。

 

小さな顔なのに、歯が大きいのがミニチュア化された犬の特徴です。

この子達は、飼い主さんがドッグショーに出されていた位で、皆格段顔が小さなかわいいダックスさんでした。 

 

この飼い主さんが、皆を手術してから言って下さった言葉が忘れられません。

「先生、歯周病は色々な病気の元のような気がします。

他の大きな動物病院に通っている友達の犬達は、並ばないといけないくらい混雑していると、いつもお腹が悪い、皮ふがわるい、耳が悪いと、動物病院にしょっちゅう連れて行っています。

でも、うちの犬達は歯周病を治してもらってから、とても元気になってしまい、病院につれていかなくても、すっかり元気になってしまいましたから。ありがとうごさいました。」と言って下さいました。

 

歯周病はサイレンキラーと呼ばれる位、

最初は痛くも無いのて.ひとでも気が付きません。

ひとでも、歯磨きしてるから!と歯医者さんに行かない人もたくさんおられるくらいです。

でも、日本人の歯周病率は30歳以上の80%と言われ、インプラント天国とも言われています。

人は30歳以上なら、最低年に2回は

歯医者さん達のプロケアを受けることが必要と言われているのにです。

 

人より骨の弱い、歯周病になりやすい犬猫なら、年に2回のプロケアでも難しい。

 

しかも、獣医大学では歯科の授業は基本無いので人の医師と同じ知識レベルのはずで。

獣医さん達は、基本検査道具の歯科レントゲンも持たず、見えている歯石取りを歯の治療と思われている節があり、歯石を麻酔かけたりして取らていたり、歯石の付き方で

そろそろ歯石をとりましょうか?とオススメされたりして、グラグラした歯を抜かれておられるように感じます。

多分ですが。

 

 

このワンちゃんは、前歯を支える骨は全滅

でも、犬歯までは歯周病になっていないので

処置の方法をこれで、考えることが出来ます。

こんなレントゲン検査が必須アイテム。

とある飼い主さんは、術前検査のの全身レントゲンで、検査して貰ってると思っていたとおっしゃっていました。

よくある話しです。

 

 

グラグラするのは、主に前歯位

たまに下の前臼歯は簡単にぬけるので+4本位の合計16本位

それを、歯石取りの時に沢山抜いてもらいました!とおっしゃるのです。

モチロン縫っておられません。

 

当院では抜歯した後、必ず歯肉を縫います。

3週間はエリザベスカラーをしないと、歯肉を縫って顎の骨が出来るまで、歯肉や糸がが切れないように守らないといけないからです。

 

歯周病の予防治療は抜歯だけではありません。

一番難しいのは、抜歯より

○感染した骨を綺麗にする

○感染した歯肉を、綺麗にして縫って骨を

下に作ること

です。

歯周ポケットが深いなら、歯肉を骨から剥がし、めくってルートプレーニングをしたり、骨を増殖させる処置をしたりする必要があるのは、人以上に大切なのです。

 

皮ふをメインにすると、若い犬猫達が来院され、早期に歯のアドバイスをしてあげられるようになりました。

 

 

このダックスさんで、歯を抜いたり縫ったり顎切除治療するのに4時間はゆうにかかりました。


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普通でも、当院では年に2回くらい麻酔かけて歯科チェックとケアをするのですが。

人の歯は28本から32本

犬の歯は42本

猫30本

 

歯周ポケット測定して、歯科レントゲン撮影する

ルーティン作業だけで、麻酔も含め最低1時間から1時間半位必要です。

 

歯科の重症の犬猫達の治療が入ると、

他の犬猫達の歯科や耳の治療は、金曜日土曜日の午後3匹から4匹やっているのですが、

その重症の犬猫の治療で終わってしまいます。

犬猫達も大変ですが、私もヘトヘト(泣)

飼い主さんは、悲しいし、心配でたまりません。

 

やはり麻酔が心配ですか? 

私も心配です。 

でも、犬なら5歳から遅くて8歳で流石の飼い主さんもそろそろ歯がマズイ!ときがついて

当院を探して来られ方が増えるのです。 

素人さんが気がつく歯の悪さのレベルなので、抜歯はまぬがれないことが多い。

 

それなら、0歳から、せめて2歳までに

当院での歯科ケアをスタートされれば

過去の実績から考えると、飼い主さんのケアも大切ですが、一生歯を健康に保ったまま

寿命を迎えてくれてきました。

 

心配なら、当院の待合室の飼い主さんに聞いてみてください。

前に勤務していた動物病院からの飼い主さんも居られるので、2代目の犬猫を連れて来てくださっている飼い主さんもおられます。

 

早期ケアスタートは、治療費用も安くなり

結果として、歯を抜くこともなく麻酔も短く

なっています。

麻酔をかけるのは、私も毎回かけてあげられるか健康状態が心配です。

健康なうちに、歯科ケアをきちんとしてあげることが、健康を守ることだと思っています。

 

皮ふから入る、歯科ケア!

皮ふを勉強して、歯を守るきっかけが増えて良かったなーと

アチコチに手を出して勉強するのも、悪くなかったかも(笑)と思う今日この頃

 

歯の手術は出血も多く、You Tubeやホームページには、医療のホームページ規約で載せられません。

だから、酷さを伝えることは今後もっと難しくなってしまうので、この写真で想像してみてください。

 

当院にきて、お金を出せば何とかなる!と思わないでください。

 

体調が悪過ぎて治療さえもしてあげられず、麻酔もかけられず亡くなってしまった

犬猫達がいたことを、少しでも知っていて

欲しいと思います。

 

普通のワンちゃんの上顎がこんな感じ


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今13歳になった8歳の頃に歯や顎のオペをしたダックスさんの写真です。



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切除した下顎は、下の舌の真下の唾液腺の手前迄切りました。
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これでも、今はドライフードをバクバク食べているそうです。

 

もっと早く、ここに来ていれば良かったのに

と飼い主さん達はおっしゃってくださいます。

 

早くきて、プロの歯科ケアスタートしましょう!

 

見えている歯石取りだけが歯の治療では無いことが、日本中の犬猫の飼い主さんに

知れ渡りますよー、祈っています。