話せない犬猫の原病巣を発見するりえ先生のブログ

犬猫の行動から、日本の獣医大では未だ授業のない歯科治療のこと。皮ふだけを治すのでは治らない犬猫の皮ふを、真の原病巣を探ることで治すのが好きな獣医師がぼつぼつ書いています。

歯を抜く基準は?

昨日、15歳のダックスさんの歯を抜きました。

お父さん犬で、その他のお母さん犬と息子犬が鼻から膿が出たので、1ヶ月くらい前に3年ぶり位に来院されました。

 

3年前程まえに、来院され歯の検診をすると、

かなり重度の歯周病でした。

その時は、麻酔をかけて

①歯石除去等のクリーニング

②歯周ポケットの測定

③歯科レントゲン撮影

をしました。

 

抜歯等をご提案したのですが、

飼い主さん達は、磨けば何とかなるのでは?と思い、歯磨きを本当に頑張られたそうです。

でも、お母さん犬と息子犬の鼻から膿が出るようになり、近くの動物病院で抗生剤を貰うようになったのだけど、収まることは無く 

意を決して、再度来院されたのだそうです。

おかえりなさい皆さん!

 

麻酔が怖い

歯を抜くのが怖い

 

と思っておられたそうです。

 

 大切なこの子達を失いたくない!

怖い思いをさせたくない!

この気持ち、良く判ります。

 

さて、それを乗り越え抜歯をしました。

16本かな?

さて、何時間かかったかと言うと約、2時間半(継続の耳の内視鏡もやったので)でした。

抜歯に30分位。

根が3本とか2本の歯は歯科用のバーで分割します。


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いきなりはバーを使うのは無理なので、 

○歯肉剥離

と言って、骨膜剥離子という道具で、歯肉を骨から剥がします。

 

抜いただけなら、こんな感じ 


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歯周病で感染した骨を綺麗にする為に、

歯肉を骨から剥がします。

これが破らないように剥がします。


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バーが歯肉に巻き込むと、バーの回転が止まり危険なのです。

 

歯を骨から、エレベーターという、

彫刻刀のような刃物で剥がして抜いていきます。

、あとの1時間半は何してたかというと

○感染した骨(骨形成)を縫うのにふさわしい用に、歯科用のバー滑らかに形成しなおしました。


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○歯肉で骨を覆えるように、形成し

歯肉フラップを作る

 

歯周病で腐った骨を除去し、骨が作られるように必要な場所に、骨補填剤を詰める


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歯周病で腐り無くなった歯の支えになる顎や頭の骨である、歯槽骨の骨を作る骨補填剤を歯周病で骨を作りたい場所に骨の感染した部位を取り除いてから入れます。


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○歯肉を溶ける糸で塗って骨を覆う


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こんなことを、やります。

何故歯を抜くのか?

⬇⬇

歯の下や周りにある歯周病で感染した骨を

取り除き、骨をそこに再生させる為!!!

 

なんです。

その歯がだめになったのが、歯周病なら

歯周病を治すには、骨を再生させるのです!

 

飼い主さんが獣医さんに良く言われた言葉で ✖なフレーズは

✖グラグラしてないから、抜かない!

✖まだ使えそうだから抜かない

 

ではなく、グラグラしてたら、抜きやすいだけで、グラグラしなくて、

正しいのは

○歯周ポケットが深くても、歯を残したまま歯周病の再生治療が不可能な場合は、再生治療をする!

 

抜歯をする目的は、歯周病で歯を残したままでは、骨の再生治療が不可能、又は他の歯の感染源になる時は抜かないといけないのです。

 

抜くだけでは、そこに骨はできません。

 

そこの腐った骨を除去し、側にある歯を守る為や、骨折させないように骨 を作ってあげる!

 

これこそが、抜歯の基準なのです。

歯科レントゲン装置もなく、

歯科の高速タービン等の機械もなく

この一連の判断が不可能な獣医師は、

歯科治療に手を出さない!

と言う気持ちも持っていただきたいと思っています。 

 

歯は歯石を取って、ぐらついた歯を抜く

 

そんな治療?は歯科治療とは言えないとさえ

思っていますが、どうでしょう?