話せない犬猫の原病巣を発見するりえ先生のブログ

犬猫の行動から、日本の獣医大では未だ授業のない歯科治療のこと。皮ふだけを治すのでは治らない犬猫の皮ふを、真の原病巣を探ることで治すのが好きな獣医師がぼつぼつ書いています。

歯が折れて神経血管が露出したら?!


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昨日は、ダックスの折れた歯を修復しました。
硬いおやつを食べさせたことが、原因です。 
犬猫の歯は人より、数倍脆いので
人が咬まないレベルの硬い物をあげるのは、厳禁です!

そのままだと、歯の神経血管に菌が入り、歯のはえている骨まて
菌がいき、骨が腐ってしまいます。

人と同じです!

①中の感染した神経を、歯の根にファイルが到達出来るよう歯科用バーで穴をあけます。この歯の根は3本なのですが、一つの穴から2本アプローチするので、穴は2つ開けます。

←この場所決めと形を作るのがが1番難しい!
犬猫は山型の歯なので、人と違って
歯の上を全部穴を開けると、
その歯が機能しなくなるので
全ての成否を決めてしまいます(汗)

②その歯の根の深さをファイルを入れて測定
ストッパーをつけて、他のファイルもそれにあわせて入れていきます。


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③その長さを少しずつ短くしつつ、消毒剤を付けつつその歯の根の神経の太さまで少しずつ大きいファイルにしつつ、穴の神経を撤去し、穴を詰め物が入るように整形していきます。クラウンダウン方式といって、太くしていくほど1ミリ短くして入れていきます。

毎回メジャーで測ります。


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これを30回以上も繰り返すのですが、根の先に削りカスが詰まるので、毎回一番最初の細いファイルので、掻き出します

面倒で、泣けそうな地道な作業です、

 

④穴が整形できたら、消毒液でその根の道を何回も洗浄します


口に刺激があるので、ガーゼを詰めて口に触れないよう洗います

⑤その穴を、紙のコヨリみたいなのを挿入して乾燥させます。


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⑥そこに殺菌作用のあるペーストを注入します。

⑦そこにガタパーチャーという、樹脂で出来た細い棒でシーリングするように、一本一本壁に押し付けつつ、熱を加えつつギューギューに横にも奥にも熱を加えつつ押し付けてつめます。


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⑧その詰め物の上にシーリング剤を入れ、

その上の詰め物が入る下作業をします。
光で早く硬まるので、ブラックライトを当てます。

 


9、ガッターパーチャーなど、汚い物が無くなるように穴をバーで
形成します。

 

詰め物が引っ付くよう、歯の表面をエッチングでザラザラにします。その後洗浄

 

口に刺激があるので、ガーゼを詰めて口に触れないよう洗います。

 

10、プラスチック樹脂の少し柔らかめのと、次に硬めのをエナメル部分に樹脂して、それぞれ光で硬めます。

 


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折れてしまったのは、先端なので、そこも、穴をきれいにして
感染した神経と血管を取り除き消毒し、ペーストをいれます。


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それを光で硬めます。


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3箇所蓋をしてお終い!

 

反対の第4前臼歯はエナメルだけ欠けてたので、歯冠修復だけしました。


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人が何回も通院して、治療する作業を、犬猫は麻酔するので1日終わらせるので、一本2時間位必要です。


大変で細かい作業。
私は、チマチマと細かいのでやりたくない仕事(笑)

そして犬には、飼い主さんがあげるおやつを気をつければ、ほぼ防げる事故!

だから、しつこく予防をお話ししています。
なので約30年間の獣医人生で、私の動物病院に子犬の時から来院している犬で折ったワンは0!

だったのですが、先月一匹だけ
ポメラニアンさんが硬いおやつをあげたそうで上の第4前臼歯を折りました!

が、幸い神経血管は露出しておらず、上のエナメル質を治す、歯冠修復だけで終りました!

お願いだから、折らないでねーー!