話せない犬猫の原病巣を発見するりえ先生のブログ

犬猫の行動から、日本の獣医大では未だ授業のない歯科治療のこと。皮ふだけを治すのでは治らない犬猫の皮ふを、真の原病巣を探ることで治すのが好きな獣医師がぼつぼつ書いています。

歯を抜いてからが、とても大切なワケ


f:id:petnomirai:20201122003228j:image

これは、今日やった歯周病にはまだなって居ない、上顎第4前臼歯です。

歯石は少し付いていますけれど。

このプードルさんは、皮ふが痒くて来院され、耳の内視鏡で鼓膜の奥をみることにしました。耳はとっても悪かったです。

でも、歯周病はセーフでした。

良かった!

 


f:id:petnomirai:20201122003550j:image

これは、先週歯石等を除去した時に

抜歯がき必要レベルになっていた同じ場所の歯

右側が第4前臼歯、左側が第一後臼歯です。

○代4前臼歯の根っこが象牙質まで露出

○レントゲンでは、第1高吸収歯の奥に骨が溶けているのは確認できました。 

 

ポイントはもう、この歯は歯周ポケットが6ミリ以上なので、飼い主さんのブラッシングで治すことはムリ

これらの歯は根が3本あるので、分割抜歯という手法でやりました

 

外側は歯周病で骨がほとんどありませんでしたが、歯の内側である口蓋根は、骨にしっなかりかり、歯を抜く道具のエレベーターが

歯の根に、刺さる隙間がありません!

そこで歯の周りの骨をバーで削りました。


f:id:petnomirai:20201122011501j:image

そこにエレベーターをいれ、

ジッーと 我慢し、ムリな力をかけないよう

歯を骨にひっつかせている歯根膜が切れるのを待ちます。

そーすると、ミシッと言う感じで

骨から歯を外すことができました。

フーヤレヤレです。

抜いてみると、歯の根の裏迄歯石がびっちり!


f:id:petnomirai:20201122012951j:image

これが、外から見えない歯肉の下の見えない歯石=歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)です。

血液と反応して作られていくので、色が黒っぽいのが特徴!

 

第4前臼歯から3本抜くと、5キロ位のダックスさんですが、長さ3センチ、横1センチ位の骨が露出したまんまになります。

抜いた穴の周りの骨は歯周病菌が染み込んで腐っています。


f:id:petnomirai:20201122010837j:image

 

その骨や腐ってできた不良肉芽も除去!

これがとても大切!

ガタガタした骨も、歯肉で覆って縫う為に、スムーズに骨形成します。

そして、歯肉でここを覆うのですが、

大穴なので、歯肉は縫うには足りません。

その為、目の下まで歯肉を骨から外し、

骨膜を切る処置をします。

すると、歯肉が少し伸びるんです。

サポートしてくれているスタッフは、

いつも不思議!と喜んでくれる

作業です。 

 

その後、歯肉を溶ける糸で縫合します。 歯肉フラップといいます


f:id:petnomirai:20201122011657j:image

縫うと、そこに骨が早く出来てくれます。

縫わないと、抜いた穴に

骨歯肉は伸びてくるので、骨を作るのを 

妨げてしまいます。

 

他院で抜きました!と聞いた時に、

3週間カラーをしていましたか?

と聞くとほぼ付けてないとお聞きします。

 

抜くより、縫う方がずっと大変で大切なんです!

歯周病で抜いて露出した骨を、歯肉フラップをどのように何処から持ってきてその骨を、覆うか!

を今迄の歯科のトレーニングでは、ずっと時間をかけて考えやっています。

抜くトレーニングは初期の初期のトレーニング。

今回は、歯肉がまだまだ使えたので 助かりました。

歯を抜く意味を理解し、協力してくださった飼い主さん!ありがとうございました。

 

犬は高齢になると、いつ体調を崩し、

麻酔が難しくなるかわかりません。

その後、歯周病が酷くなって、目の下に穴が空いたり、顎が折れないように

抜く必要のある歯が処置てきたので

コレで一安心!

 

このワンちゃんが、今後抜かないといけない

重度の歯周病の歯はこれで無くなったので

安心して歳を重ねて貰えます!