話せない犬猫の原病巣を発見するりえ先生のブログ

犬猫の行動から、日本の獣医大では未だ授業のない歯科治療のこと。皮ふだけを治すのでは治らない犬猫の皮ふを、真の原病巣を探ることで治すのが好きな獣医師がぼつぼつ書いています。

歯を抜く基準や目的は?!

皆さん、
(飼い主さん)
歯はダメになったから抜く

もうその歯は使え無いから、モノが噛めない

可哀想
 
○獣医師サイドからは、獣医大学では歯科の基礎教育は無いのが現状で、人の医師は人の歯科以外の治療をされ、獣医師は人以外の治療をするような基礎教育を最低限受けてきている同じ状況と思っていただけたら良いかと思います。
その為、私も卒業してから勤務先の院長に麻酔をかけた時に
この道具(超音波スケーラー)で、歯石を取っておいてくださいね、使い方はこんな風にね!
と5分程教えて貰いやっていたのが実情です。
グラグラしてたら(基本根が一本の歯である、前歯がグラグラするか、その後ろの2本目位までの上下の前臼歯が根が2本だけど、比較的奥の歯より根が浅いので、歯周病で骨が、腐ってくると特殊な処置←分割抜歯等しなくても抜け易い)抜いておくように。
とアドバイスされ抜いていました。
グラグラして無かったら、まだ大丈夫!との判断をするしかありませんでした。
だって、卒業していた時点では歯の本数を知っているくらいだったからです。
人の歯科衛生士さんも、2年から3年歯科についてだけトレーニングされるにも関わらずです。
ですから、私は歯科をある程度勉強されようとか、される場合獣医さんにも
歯科レントゲン装置と高速タービンや歯の研磨や歯の詰め物を固める、歯科用光重合機等を揃えることからスタートすることを
アドバイスさせていただきますので、
飼い主さんが歯科を勉強されているだろと思われる獣医さんを選ぶ基準も、それで良いかと思います。
 
最低歯科レントゲン撮影装置を持っておられないと、歯周病の診断さえも無理だからです。
極端な言い方をさせていただくと
 
その歯がグラグラしている

抜く
になっているのでは?と推察しています。
 
まだまだ勉強中で、全然十分とはまだまだ思えない私ですが、拙いながらでも20年動物の歯科を勉強したことの経験から言うと


歯周病の診断は
プローブと歯科レントゲンを組み合わせて診断するので、歯科レントゲンは必須です。
 
私の歯を抜く目的はこのように
歯の分岐が露出したり、レントゲン撮影しても映らない場所でも、3根歯でプローブ検査により深い場所の歯周病の感染が想定される場合


 
歯周病の骨の再生治療が不可能又は飼い主さんが希望されないで、その歯の
歯周病(骨への感染)が今後より酷くなることが想定される場合

 

抜いてみると、こんな裏まで歯肉の下の見えない歯石=歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)がビッチリ!

この場所はルートプレーニングもできません。


 
B その歯があることで、より大切な機能のある歯の歯周病の治療が困難な場合

→下の第3切歯(前歯)があることで、
下の犬歯のルートプレーニングが出来無い=歯周病が治療出来ない場合

 

犬歯をプロービングして歯周ポケットがあったとしても、この切歯があることで

ルートプレーニング作業が不可能です。

 
C その歯があることで、構造上プラーク歯周病になることが避けられない場合
→顎の狭い犬で、生えたばかりの永久歯下の前歯がまっすぐに生えることが不可能と想定される子犬(叢生=クラウディングと呼ばれる状況)は抜く時期に寄っては6本ある前歯を4本に減らし、顎の成長とともに歯と歯の間隔が広くなり、前歯に接する下の犬歯が歯周病になることを防げる場合もあります。

例えば、乳歯異残もそうですが、

乳歯は抜くタイミングがとても大切なのは

他の場所で書いてあるので、よかったら見てみてください。
 

抜く場合でも、グラグラしてだめだから抜いた!

だけではダメで

犬猫は人よりも骨が脆い為、

歯周病が重症な場合がほとんど

 

人と違い歯周病になることは、骨が腐って無くなっているので、そこに骨を作ってあげることが大切です。

 

抜いたまんまではだめ!

基本歯肉を縫うことが大切です!

縫うのが簡単な場所もありますが、

 

私の歯の先生曰く

 

歯周病の外科手術をしていて一番難しいのは

骨を再生させることより、歯周病で無くなってしまった歯肉を、どの部分の歯肉を使って

歯周病で露出したり、歯を抜いて露出した顎や頭の骨を歯肉を覆うのかナノだ!

と仰っていたとおりです。

皮ふの腫瘍を除去した時や怪我して皮ふが失くなってしまったときは、いまなら

皮ふの変わりになる人工的な皮ふを覆湿潤療法が一般的ですが、歯肉にはそれが不可能です。

皮ふだと、他の皮ふを切って、その場所迄引っ張ってきて、覆うなんてことも、足先や手足は別にして比較的簡単です。

 

 

人は抜歯しても、感染が軽度な場合も多く、親知らず等は縫わない場合が多いようですが、歯周病等で抜いた場合は

縫う方が良いのは判っているのだけど

口を日々洗浄して貰って縫って無いです。

とおっしゃる歯科医の先生のお話しも

チラホラお聞きします。

人は、綺麗に自分で洗浄を自覚してされることが可能

親知らずは感染がそこに無い場合、特に縫わない場合も多いらしいですが、その場所の血餅が取れてしまって、骨がむき出しの乾いたまんまになって、ずっと痛みが持続する場合もたまにあるようです。

さて、歯の痛みは虫歯でもギャー! と言う痛みではないですよね。

だから、知人の方の歯の痛みは外から見ても判らないように、飼い主さんには食べている限り判別つかないと思いますが、

可哀相だと思いませんか?

 

 

例えそれが、獣医師の処置であっても

 

歯科レントゲンも持たないで、歯石取りの処置を麻酔しても、しなくても

また、ルートプレーニングを少しの知識でしているつもりでも、プローブ検査だけで歯科レントゲン撮影して居ない場合、

歯周病の治療が出来てない

又は、抜歯してあげないといけないグラグラしていない歯も放置してしまっている可能性があり、飼い主さんはその処置で

歯周病を治して貰っていると信じてしまって、かなり悪化させてしまったまま、

私が偶々他の耳の処置で麻酔をかけた時に

発見する場合が、実はとてもとても多いのです。

 

獣医師の方にその事を少しでも、判っていただきたいなと思っています。