話せない犬猫の原病巣を発見するりえ先生のブログ

犬猫の行動から、日本の獣医大では未だ授業のない歯科治療のこと。皮ふだけを治すのでは治らない犬猫の皮ふを、真の原病巣を探ることで治すのが好きな獣医師がぼつぼつ書いています。

12歳の猫ちゃんの歯周病が酷く抜歯した後は?


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溶ける上の犬歯の周りの歯茎は最初は真っ赤!

奥の骨が腐っていました


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レントゲン撮影したら、犬歯の周りの骨が空洞になっています

これは歯周病で骨が腐って溶けたのです。

1月11日です。


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口の中を歯石取ったり、必要な場所は

ルートプレーニングもして、ポリッシュもしました!!

グラグラした歯を抜いたら、大きな穴が!

抜いたら終わりではありません!

歯周病は歯の周りの骨に菌が散らばってる状態

骨も汚いんです。

そして、口の炎症が収まる頃を見計らって


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この穴の下の汚い骨を削りとってきれいにして、歯茎=歯肉で覆います。

専門用語でいうと骨形成と歯肉フラップを実施しました。


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歯肉を切って歯の生えていた歯周病になった骨を出して、きれいにします。

そして歯肉をきれいに整えて穴をきちんと縫います。

そうすると、ここに骨が出来ます。


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人が胃腸とか縫うような溶ける細い糸で縫います!←ここ大切!

 

細かく縫いすぎると、血流が阻害されて

縫った歯肉が腐り落ちてしまいます。

又、口の中は良く動く場所なので

その動きについてこれるよう、歯肉を裏から薄く筋膜を切って、歯肉が延びるように加工します。歯肉をひっつける上の顎の口蓋(ギザギザの部分)も骨から剥がします。

そうでないと、針がかけられませんし、

口の動きについてこれず、口蓋側も歯肉もちぎれてしまいます。

猫の歯肉は薄くて、皮ふのように他のところから持ってこれないので、針を刺す時も破らないように、丁寧に縫います。

破れたら、血流が阻害されてもうその歯肉は使えないので大変ですから、もう細心の注意を払います。

骨を覆う歯肉がないと、骨が死んでしまうので骨折して、骨が露出しているのと同じで

感染で死んでしまうこともあります。

歯周病って知らない間に命を奪うものなのです。

穴をきちんときれいにして歯肉で覆うと、三週間位で骨ができてきます。

口腔外科をやる獣医仲間は皆さん歯を抜くより、縫うほうが難しい!!と言います。勿論私も!

カラーを決して外さない!

柔らかい食事をしてもらいます。

カラーをしていても、カラーに顔を擦りつけられると、糸はすぐにちぎれてしまいます。

三週間飼い主さんも私もドキドキして

見守ります。

この子は歯を抜いても、その日から

バクバク食べてくれたので、助かりました。

3日おき位に洗浄に通ってもらいました。

糸にプラーク歯周病菌がつくと、そこに又炎症が起きますからチェックします。

 

そしてそして!

先日麻酔しなくても見せてくれたので

写真が撮れました!


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おめでとうございます!成功です。

歯肉に埋まった糸は溶けていきますが、

歯肉の外に出てるのは溶けるのが遅くなります。もうその糸のプラークを飼い主さんも触っても大丈夫です。


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前より、気持ちよくのんびりねるようになってくれたそうです。

 

今迄歯周病で痛かったんですねーって。

12年間の間に、嘔吐で入院されたりしたそうです。

口が痛くて丸呑みしたり、食べ辛かったのかも知れませんね。

 

良かった良かった!

これからは、もう抜かないで良いように

歯磨きと半年に一回の歯科ケアを

して下さいね!

痛い場所が無くなると、歯を触らせてくれて

歯磨きも出来るようになる犬猫も多いのです。